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13年前、私はこの本に星3つをつけていた
『禅ゴルフ』を最初に読んだのは2012年です。当時のブログに感想を書き、5段階で星3つと評価していました。
悪い本だとは思わなかった。ただ、「精神論だな」という印象が強かったのを覚えています。当時の私が欲しかったのは、もっと直接的に球が良くなる話でした。
13年経って読み返しました。評価は上がりました。
理由は単純です。この本に書かれていたことの一部は、心理学の実験で確かめられている現象だと後から知ったからです。精神論ではなかった。
「サルのことを考えるな」と言われたら
この本で最も有名な箇所から始めます。
誰かに「サルのことを考えてはいけない」と言われたら、何が起こるでしょうか。サルが頭に浮かびます。 考えないようにしようとするほど、鮮明になります。
そしてコースで「池に入れるな」と自分に言い聞かせると、頭に描かれるのは——池に向かって飛んでいくボールです。
忘れられない17番
月例競技のことです。優勝も狙えるスコアで迎えた17番、ロングホールの3打目。
池越えとはいえ、ピンまで残り90ヤード。私にとっては何でもない距離です。
ただ、池にだけは入れたくなかった。
結果は大ダフリ。ボールは池に消えました。
「入れたくない」と思った先に、きれいに吸い込まれていったわけです。
これは心理学で説明されている現象です
「考えないようにすると、かえって考えてしまう」という現象は、心理学で研究されてきたテーマです。日本では**「シロクマ実験」**として知られています。「シロクマのことを考えないでください」と指示された人ほど、シロクマを思い出す回数が増えるという実験です。
つまり、プレッシャーがかかっている場面ほど、「〜するな」という自己命令は逆に作用しやすい。 本番でこそ裏目に出るわけです。
あの17番の3打目は、まさにこれだったのだと思います。
これを知ってから、この本の記述の意味が変わりました。
では、どう言い換えればいいのか
答えはシンプルです。否定形をやめて、肯定形にする。
| ❌ 避けたい言い方 | ✅ 言い換え |
|---|---|
| 池に入れるな | グリーン右のエッジに運ぶ |
| ダフるな | ボールの先の芝を削る |
| ショートさせるな | カップ1メートル奥まで届かせる |
| 力むな | 8割の力で振り抜く |
やることは同じでも、頭に描く映像が変わります。
私はいま、上りのパットで試しています。「ショートさせるな」ではなく「カップの1メートル奥まで届かせる」と自分に言う。
「とりあえず打つ」を禁じる
この本には、「とりあえずショット」を打ってはいけないという趣旨の指摘があります。
準備が整っていないまま、なんとなく構えて振ってしまう。心当たりのある方は多いのではないでしょうか。
私は特に耳が痛いところです。別の記事にも書きましたが、私は自他ともに認める早打ちです。 素振りもしない、ライも読まない、構えたらすぐ振る。
ボビー・ジョーンズも「90以上で回る人の大半は打ち急いでいる」と書いていました。1930年代のジョーンズと、2000年代のペアレントが、同じことを指摘している。 時代も立場も違う二人が同じ結論に至っているなら、そこには何かあるのだろうと思わざるを得ません。

ジャック・ニクラスの問い
この本には、ニクラスの言葉が引かれています。要旨はこうです。
もし毎ショットきちんと戦略を立て、実力以上のプレーを狙わず、癇癪を起こさず、結果が悪くても自分を責めなかったとしたら——何ストローク少なくなっていたか。
自問として非常によくできています。4つの条件に分解できるからです。
- 打つ前に戦略を立てたか
- 自分の実力の範囲でプレーしたか
- 感情を乱さなかったか
- ミスの後、自分を責めなかったか
私が痛感するのは3つ目です。
ショートパットを外した次のホール。ティーショットが曲がるんですよね。 前のホールの感情を、そのまま引きずっている。
冷静に考えれば、外したパットとティーショットには何の関係もありません。それでも曲がる。感情が動作に出ているということです。
ラウンド中にこの4項目をチェックするだけでも、スコアは変わるかもしれません。道具も筋力も要らない改善策です。
いちばん実用的だった提案:自分なりのパーを設定する
この本の提案で、最も具体的で、しかも今すぐ試せるのがこれです。
スコアカードに書かれたパーは、プロを基準にした数字です。自分のハンディキャップに応じて、各ホールのパーを設定し直す。 たとえばパー4を、自分のパー5として扱う。
すると何が変わるか。
- 5打で上がれば「パー」なので、自分を責める理由がなくなる
- 精神的に安定した状態でプレーが続く
- 結果として、崩れにくくなる
実際にやっているホール
メンバーコースの10番がそれです。
400ヤードを超えるパー4で、左サイドはすぐ崖のOB。フェアウェイも狭い。正直、私の実力では簡単にパーが取れるホールではありません。
なのでここは、自分の中ではパー5として扱っています。5で上がれば「パー」、6でも「ボギー」。
これだけで、10番を終えた時点の気分がまったく違います。そして気分が違えば、11番のティーショットが変わる。 前の項で書いた「感情を引きずる」問題への、実質的な対策にもなっているわけです。
これは数値で検証できます
私はGarmin Approach S70でラウンドデータを記録しています。「自分なりのパー」を設定したラウンドと、通常のラウンドで、スコアに差が出るのかどうか。
同じ人間が同じコースで比較すれば、ある程度は分かるはずです。これは今後の検証テーマにします。
この本をどんな人に勧めるか
勧めたいのは、技術は一定水準にあるのに、本番でスコアを崩す人です。練習場では打てるのにコースで打てない、という自覚がある方には刺さるはずです。メンタル面に不安を感じている方にこそ向いています。
勧めにくいのは、まだスイングが固まっていない段階の方です。メンタルの前に技術という順序は、否定できません。
そして13年前の私のように、「精神論は要らない」と思っている方にも、いまなら勧めます。この本の内容の一部は精神論ではなく、確かめられている現象の話です。 それを知っているかどうかで、読み方が変わります。
仏教や禅の引用が多いので、そこが合うかどうかは分かれるところです。ただ、そういう部分を飛ばしても実用的な提案は十分に残ります。
例:禅ゴルフ ― メンタル・ゲームをマスターする法(Amazon)
ゴルフの本は移動中に聴くのにも向いています。Audibleには30日間の無料体験があるので、合わなければ解約すれば費用はかかりません。
まとめ:13年かかって分かったこと
星3つから、星4つに上がりました。
当時の私は「精神論より技術」だと思っていました。それが13年経って変わった理由は、3つあります。
1つ目は、これが説明のつく現象だと分かったこと。 シロクマ実験に代表される研究があり、動作にも及ぶという報告がある。精神論として片付けられる話ではありませんでした。
2つ目は、「自分なりのパー」という発想の実用性。 これは今すぐ誰でも試せて、しかも効果を数値で確かめられます。近いうちに検証します。
3つ目は、早打ちを100年前から指摘されていたこと。 ボビー・ジョーンズもペアレントも同じことを言っている。自分の弱点が、そんなに昔から知られていたのかと驚きました。
技術の話ばかり追いかけていた13年前の自分に、この本をもう一度渡したいところです。
【出典】
ジョセフ・ペアレント 著『禅ゴルフ ― メンタル・ゲームをマスターする法』 ベースボール・マガジン社
※私が読んだのはベースボール・マガジン社版ですが、現在はちくま文庫版が入手しやすくなっています。
【参考文献】
- Wegner, D. M., Schneider, D. J., Carter, S. R., & White, T. L. (1987). Paradoxical effects of thought suppression. Journal of Personality and Social Psychology, 53(1), 5–13.

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