この記事で分かること
道具を替えたあと、ラウンドの記録を見て「良くなった」と思うことがあります。それが本当に道具の差なのか、それともまだ何とも言えない回数なのか。
これは計算で出ます。必要なのは3つだけです。比べたい指標の現在の値。見たい差の大きさ。そして、その指標が1ラウンドに何回発生するか。
この記事には、その早見表を置きます。自分のラウンド数を当てはめれば、いま手元にある数字が使えるかどうかが分かります。
きっかけは自分の企画でした。パターを3本使い分けて比べようとして、先に必要ラウンド数を出したら、16年かかると分かりました。その計算をそのまま一般化しています。
まず、いちばん短い答え
ラウンドの記録で道具を比べるとき、見えるのは大きい差だけです。
3パット率が10%の人を例にします。パーオンしたホールは1ラウンドに4つほどなので、10ラウンドで40ホール。この40ホールで確かめられるのは、次の大きさの差です。
| ラウンド数 | 比べられるホール数 | 10%に対して見える差 |
|---|---|---|
| 10 | 40 | 36.0%以上 |
| 20 | 80 | 27.1%以上 |
| 30 | 120 | 23.4%以上 |
| 50 | 200 | 20.0%以上 |

10ラウンドでは、3パット率が36%まで悪化しているような場合でないと差として出ません。10%と15%の違いは、この表のどこにも入っていません。
つまり、10ラウンドや20ラウンドの記録を見て「替えてから3パットが減った」と言うとき、その数字は差を測れる回数に届いていません。
以下は前提です。両側5%、検出力80%。統計の話に慣れていない方は、「これくらいの回数が無いと、偶然との区別がつかない」という目安として読んでください。
早見表:率で比べるとき
パットの成否、フェアウェイキープ、パーオン。ゴルフで比べたくなる指標の多くは、入った・入らないの率です。
率を比べるときに必要な回数は、元の率と、見たい差の大きさで決まります。
| 比べる2つ | 必要な回数(1本あたり) |
|---|---|
| 10%と25% | 100 |
| 10%と20% | 199 |
| 10%と15% | 686 |
| 10%と13% | 1,774 |
| 50%と65% | 169 |
| 50%と60% | 387 |
| 50%と55% | 1,565 |
| 70%と85% | 120 |
| 70%と80% | 293 |
| 70%と75% | 1,251 |
ここでいう回数は、その場面が発生した回数です。パットなら球数、ティーショットなら打った本数です。
早見表:それがラウンド何回分か
上の表の回数を、ラウンド数に直します。1ラウンドにその場面が何回発生するかで割ります。
| 比べたいもの | 1ラウンドあたりの発生回数(目安) |
|---|---|
| ティーショット | 14 |
| パット全体 | 30〜36 |
| パーオンしたホール | 3〜5 |
| 特定の番手のショット | 1〜3 |
| ラウンドスコア | 1 |
パーオンしたホールが1ラウンドに4回しか発生しないことが、パターの比較を難しくしています。18ホール歩いて、比べられる場面が4回です。
逆にティーショットは1ラウンドに14回あるので、同じ回数を集めるのに必要なラウンド数は4分の1以下になります。
よく聞く言い方を、当てはめてみます
新しいパターにしてから、3パットが減った(10ラウンド)
見えるのは36%以上の差です。元が10%なら、26ポイント悪い場合でないと区別がつきません。10ラウンドの3パットの数は、ほとんどがその日のグリーンとその日の調子です。
新しいドライバーにしてから、フェアウェイキープ率が上がった(20ラウンド)
ティーショットは1ラウンド14本なので、20ラウンドで280本。元が50%として、見えるのは61.7%以上です。10ラウンド(140本)なら66.4%以上。5〜6ポイントの改善は、この回数では出ません。
替えてからスコアが2打良くなった
スコアは1ラウンドに1つしか出ません。しかもばらつきが大きい。
| スコアのばらつき | 2打の差を見るのに必要なラウンド数(1本あたり) |
|---|---|
| 3打 | 35 |
| 4打 | 63 |
| 5打 | 98 |
自分のばらつきは、過去のスコアの標準偏差で出せます。2本を比べるなら、その倍のラウンド数が必要です。
差が半分になると、必要な回数は4倍になります
これが、この計算でいちばん効く性質です。
10%と20%を区別するのに必要なのは199回。10%と15%になると686回。差が半分になっただけで、3.4倍に増えています。
差が小さくなるほど、必要な回数は急に増えます。道具の差は、たいてい小さい差です。同じことは飛距離の最大値でも起きていて、10球なら268ヤード、1,000球なら319ヤードに書きました。あちらは回数が増えるほど数字が伸びていく話です。
ばらつきを比べるのは、さらに難しい
「距離が揃うようになった」を確かめたい場合は、平均ではなくばらつきを比べることになります。これは桁が変わります。
| 見たいばらつきの比 | 必要な球数(1条件あたり) |
|---|---|
| 1.15倍 | 403 |
| 1.25倍 | 159 |
| 1.4倍 | 70 |
| 1.75倍 | 26 |
ばらつきが1.15倍違う、つまり「少し揃った」を確かめるには400球必要です。20球や30球の試打では、ばらつきの差はまず出ません。
実際にやってみた例があります。パター3本を8ヤードで275球打ったとき、100球ずつなら1.4倍の差までは読めました。25球では、差がまったく無くても1.4倍まで散らばります。
自宅や練習場で20球ずつ打って比べるなら、見るのは平均か率にしたほうが答えが出ます。
ただし、率のほうにも落とし穴があります。入った率でパターを比べたら、届いたかどうかを比べていましたでは、カップインした率が24%と72%に割れました。開いていたのは同じパターの1回目と4回目で、差はカップに届いたかどうかで決まっていました。率を見るときも、何と何が混ざった数字なのかを先に確かめたほうが安全です。
私の場合は、16年でした
ここからは自分の企画の話です。
入れたいパットのために替えて、効いたのは遠いパットのほうでしたで、パター3本を6年分のラウンド記録で比べました。遠いところからの3パット率が、24.3%、15.2%、10.7%と下がっていました。3本が別々の期間にあるので、これから使い分けて同じ期間に並べようと考えました。
その前に、上の計算をしました。比べたいのは15.2%と10.7%の差です。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 必要なパーオンホール数 | 約870ホール/1本あたり |
| パーオン率23.1%で換算すると | 約210ラウンド/1本あたり |
| 3本合計 | 約630ラウンド |
| 年40ラウンドとして | 約16年 |
ラウンド平均のパット数で比べると、3本で約1,700ラウンド、42年になります。
3年続けたときに見えるのは22%以上の差で、いま見たい4.5ポイントの差は入っていません。1年後には数字そのものは出ますが、それは13ラウンドぶんの数字です。
前の記事でいちばん古いパターと今のパター(24.3%と10.7%)の差が出たのは、必要ホール数が約120だったからでした。差が大きかったから、233ラウンドで見えました。次に見たい差は、その7倍の回数が必要です。
6年分を数え直せたのは、記録が残っていたからでした
この計算をする前に、ひとつ前提があります。1ホールごとのパット数が、6年分残っていたことです。
私の場合はゴルフウォッチが自動で記録していました。4,194ホールぶんあったので、パーオンしたホールと外したホールに分けて数え直すことができました。どう記録されているかはゴルフのデータは、後から作れませんに書いています。
記録が無ければ、この記事の計算は最初からできません。何ラウンド必要かが分かっても、過去のぶんを数えられないからです。
これから道具を替えるつもりなら、替える前の記録があるかどうかを先に見てください。替えたあとに気づいても、前のぶんは戻ってきません。
どうすれば回数を稼げるか
同じ問題は、ラウンドの記録で道具を比べようとする人全員に起きます。対策は3つあります。
発生回数の多い場所に移す
ラウンドが効率の悪い場所なのは、1ラウンドでその場面が数回しか起きないからです。練習グリーンや自宅のマットなら、同じ場面を続けて作れます。
私の場合、ショートパットの成功率(70%と80%を想定)を比べるのに必要なのは1本あたり約290球でした。3本で約880球。1セッション100球として9回です。16年が9回になります。
自宅のマットは長さ240センチ、幅67センチです。立つところには別の土台が付きます。打ったあとに球が戻ってくるので、拾いに行かずに続けて打てます。100球打つときに、この機能があるかどうかで時間が変わります。使っているマットは曲がるパットだけは家で練習できなかったに書きました。
ここで1つ断っておきます。マットは本物のグリーンではありません。傾斜がなく、速さも違い、転がりが均一です。私が使っているものは傾斜を付けられるので平らよりはましですが、それでもグリーンの代わりにはなりません。ここで出た差がそのままグリーンで出るとは書けません。
率で答えが出る問いを選ぶ
入った・入らない、フェアウェイに行った・行かない。こうした二択の指標は、ばらつきの比較よりずっと少ない回数で足ります。
交互に打つ
同じ日に、同じ場所から、AとBを交互に打ちます。まとめて40球ずつ打つより、10球ずつ交互のほうが良い。その日の調子やグリーンの速さが差分で消えるからです。
この3つを足すと、必要な回数はさらに下がります。
この計算が出すのは、下限です
ここまでの数字には、条件がひとつ付いています。比べる2つ以外は何も変わらない、という前提です。
実際には変わります。自分の腕も、コースも、季節も動きます。だから実際に必要な回数は、この表の数字より多くなります。ここに出した回数は、いちばん都合の良い条件での下限です。
私の企画で言えば、6年のあいだにパーオン率が17.1%から23.1%まで上がっていました。パターを替えたのと同じ期間に、ショット全体も変わっています。この状態では、パターだけの効果は取り出せません。
自分の設計
参考までに、私がこれからやることを書いておきます。
ラウンドでは1ラウンド1本にします。3本まとめてバッグに入れると16本になり、他のクラブを2本抜くことになります。そうするとパーオン率が動きます。パット数はパーオン率で動くので、パターを比べるために比較を壊す変数を入れることになります。
記録は、日付とパター名の対応表1枚です。ウォッチには、その日どのパターを使ったかが残りません。ラウンド当日に書きます。Roddio はシャフトが交換式で純正が2本あるので、どちらを挿していたかも書きます。書かないと、3本の比較のつもりが4条件になります。
本体の比較は練習グリーンと自宅のマットに移します。240センチのマットで打てるのは短いパットですが、これは前の記事で6年間まったく動かなかった距離帯で、DF3を買った動機だったショートパットの距離でもあります。狙う場所としては合っています。
ライ角が自分に合っているかは、まだ測っていません。前の記事にも書きましたが、合っていると思っている、までしか言えていません。
ラウンドでの使い分け自体は続けます。ただしそこから出てくる数字は測定の結果ではないので、そういうものとして書きます。
持ち帰れること
道具を替えたあと、記録を見る前に回数を数えてください。
見たい差が小さいほど、必要な回数は急に増えます。差が半分なら4倍です。
ラウンドは、比べる場所としては効率が悪い。1ラウンドに数回しか起きない場面を比べているなら、その場面を続けて作れる場所に移したほうが早く答えが出ます。
そして、替える前の記録が無いと、比べること自体ができません。
私の場合は、球を1球も打たないうちに企画がひとつ終わりました。
計算に使った式
自分の数字で計算したい方のために、使った式を置いておきます。両側5%、検出力80%です。
率を比べるとき、1条件あたりに必要な回数は次の式で出ます。
n = (1.96 × √(2 × p̄ × (1−p̄)) + 0.84 × √(p₁(1−p₁) + p₂(1−p₂)))² ÷ (p₁ − p₂)²
p̄ は2つの率の平均
平均を比べるときは、もっと簡単です。
n = 15.7 × (ばらつき ÷ 見たい差)²
表計算ソフトにそのまま入ります。
この記事で使っている道具
この記事に出てくる道具は3つです。ゴルフウォッチとパットマットは本文の中に置いてあります。ここに置くのは、比べている3本のうちの1本です。

