構えたときに、パターのフェースがどこを向いているか。自分では見えません。
上から覗き込んでも、見ているのはヘッドの上面です。ボールに当たる面そのものは、構えた姿勢からは見えない位置にあります。
だから道具を作りました。フェースに当てると、フェースが向いている方向にレーザーが出る、それだけの装置です。
設計を21回やり直しました。この記事は、その21回の話です。
仕組みは、これだけです
三角形の底辺をフェースに当てます。頂点の方向に、緑のレーザーが出ます。

底辺がフェースと同じ向きになるので、レーザーはフェースの正面に飛びます。飛んだ先が、構えたときに狙っている場所です。
参考にした市販品はあります。ただし名前は出しません。実物を見たことも触ったこともないからです。
見ていないものと比べることはできません。安く作れたとも、同じものができたとも書きません。書けるのは、自分が作ったものの話だけです。
部品は4種類、3,410円
| 部品 | 入手先 | 金額 |
|---|---|---|
| レーザーモジュール 515nm 5mW(φ12×L40) | AliExpress | 2,500円 |
| 電池ケース CR2032×2(スイッチ・コネクタ付) | 秋月電子 | 150円 |
| CR2032 電池×2 | 秋月電子 | 60円 |
| 抵抗33Ω、熱収縮チューブ、M3ネジ、M2タッピングネジ | 秋月電子ほか | 700円 |
3Dプリンタのフィラメント代は含んでいません。
印刷したのは AnkerMake M5 です。フィラメントは ELEGOO の PLA、色は黒。
フィラメントは消耗品です。3Dプリンタ用の材料は、SK本舗のような専門の通販でも扱っています。
同じ機械で別の道具を作ったときに、材料と設定が合っていないことに気づきました。折れた原因は湿気だと思っていました。30度低い温度で刷っていましたに書いています。
1回目の設計は、こうでした
設計データが残っています。1回目の寸法です。
| 項目 | 1回目の値 |
|---|---|
| 底辺(フェースに当てる面)の長さ | 90mm |
| 高さ(底辺から頂点まで) | 55mm |
| 厚み | 30mm |
| 外壁の厚さ | 3mm |
| レーザーの光軸の位置 | 底辺から25mm |
| レーザーホルダーの外径 | 16mm |
| 本体側の穴の径 | 17mm |
| 調整ネジ | M3を3本、120度おき |
| 電池蓋を留めるネジ | M2を4本 |
| スイッチ穴 | 直径7mm、上面、底辺から45mm |
ホルダーが16mmで、本体側の穴が17mm。1mmの隙間は逃げではなく、調整代です。この時点で、まっすぐには出ないだろうと見込んでいたことになります。
そして1回目は、二等辺三角形でした。
三角形の中に、四角い部品は入りませんでした
3回目で、二等辺三角形をやめています。頂点を落として、台形にしました。
理由は電池ケースです。収まらなかった。
三角形は、頂点に近づくほど幅がなくなります。電池ケースは四角い部品です。ボタン電池を2個並べて、スイッチとコネクタが付いている。この四角を三角形の中に置こうとすると、置ける場所は底辺の側だけになります。
底辺の側には、レーザーのホルダーがあります。光軸は底辺から25mmの高さを通っていて、ホルダーの外径は16mm。底辺寄りの空間は、そこで埋まっています。
残るのは頂点の側です。ところが頂点の側には幅がありません。
そこで頂点を落としました。落とした分だけ上辺に幅ができて、電池ケースが入るようになります。同時に本体を高くしています。1回目は底辺から頂点まで55mmでしたが、3回目は80mmほどまで伸びています。電池蓋も、幅30mmから55mmほどに広がりました。

道具として正しい形と、部品が収まる形は、別でした。
頂点がないと、的に合わせられませんでした
台形にしてみて、使いにくいことが分かりました。
この道具は、頂点の方向にレーザーが出ます。置くときは、装置を的のほうに向けます。そのときの目印が頂点です。尖った一点があるから、どこを向いているかが見て分かります。
台形に頂点はありません。上辺は平らな線です。線を的に合わせようとすると、線のどこを基準にするのかが決まりません。
11回目で、二等辺三角形に戻しています。
戻すために、電池ケースを反対側へ移しました。1回目は頂点の側、つまり三角形でいちばん幅のない場所に置いていました。11回目は底辺の側、いちばん幅のある場所です。そしてレーザーを、中央線に沿わせて頂点の方向に通しました。スイッチの窓も底辺の側に移っています。
底辺側に四角い部品、頂点側に細長い部品。頂点を落とす必要がなくなりました。
本体は大きくなっています。底辺は90mmから110mm、高さは55mmから90mmへ。
同じ11回目で、本体を上下2枚に割っています。下半分にレーザーの溝、上半分に電池ケースの凹みとスイッチの窓。
3枚目は、高さを調整するための板です
12回目で、2枚が3枚になります。下半分と上半分の間に、中間層を入れました。
- 下半分 … レーザーを収める溝と、配線の通路
- 中間層 … レーザーを上から押さえる半円の凹みと、位置決めのピン
- 上半分 … 電池ケースの凹みと、スイッチの窓
理由は2つあります。
ひとつは配線です。1枚の塊で作ると、レーザーと電池ケースをつなぐ線を通す道がありません。穴を開けて通そうとすると、印刷のときに支える材料が必要になります。板と板の間なら、溝を掘るだけで線が通ります。
もうひとつは調整です。中間層は3本のネジで留まっていて、その締め具合で、レーザーの高さと平行を出します。締めれば下がり、緩めれば上がる。3本の締め方を変えれば、傾きも変わります。
板を1枚足したことで、通り道と、調整の仕組みが同時にできました。
何回印刷したかは、覚えていません
設計は21回。印刷は、それより少ない回数です。
図面の段階でだめだと分かるものがあります。壁が薄い、穴が近すぎる、部品同士が干渉している。画面の上で気づけば、印刷はしません。
印刷しないと分からないものもあります。電池ケースが入らないことも、配線が通らないことも、出力して部品を合わせてみて分かりました。3回目で頂点を落としたのも、12回目で板を1枚足したのも、そこからです。
数えていないので、正確には言えません。10回以上は印刷したと思います。
失敗の見つかり方は、ひとつではありませんでした。画面の上で見つかるもの。印刷して見つかるもの。部品が届いて見つかるもの。3つ目が16回目です。
形が変わったところ
残りの回は寸法の詰めです。ネジ穴の位置、壁の厚み、部品の収まり。設計だけで21回かかったうち、外から見て分かる変化はわずかです。
レーザーモジュールが、図面より5mm長かった
1回目は、モジュールの長さを35mmとして設計しています。実際にネットで買って届いたものは40mmでした。
電池ケースのスイッチが、側面にあった
16回目です。
電池ケースを図面の寸法だけで設計していました。実物が届いてから、スイッチが側面に出ていることに気づきました。
1回目の設計では、スイッチ穴を上面に開けるつもりでいます。直径7mm、底辺から45mmの位置。別部品のスイッチを自分で取り付ける前提でした。実際に届いた電池ケースには、最初からスイッチが付いていて、それが側面にありました。
図面には外形しか書いてありませんでした。スイッチの位置は、写真だけではわかりませんでした。
配線を、横から縦に変えた
17回目です。
レーザーモジュールから電池ケースまで、配線を底面に横に這わせていました。這わせた分だけ本体が浮きます。浮くと、底面がマットに密着しません。
配線を通す溝を、横ではなく縦に切りました。本体の中を立ち上げる形です。底面が平らになりました。
1回目の設計には、配線を通す溝がありません。線をどこに逃がすかを考えていませんでした。12回目で3枚に割ったときに通路ができて、17回目でその通路の向きを変えたことになります。
電池蓋のネジが、4本から1本になった
21回目です。
1回目はM2のネジ4本で蓋を留めていました。電池を替えるたびに4本外して4本締めることになります。
1本で開くようにしました。
水平器は付いていません
組み上げても、レーザーはまっすぐには出ませんでした。
穴の開き方、モジュールの傾き、本体のわずかな反り。それぞれは小さいのですが、3メートル先では見える大きさになります。
調整するのが、さきほどの3本のネジです。中間層の締め具合で、高さと平行を出します。
ただし、水平器は付いていません。合っているかどうかを教えてくれる目盛りが、装置の側にはありません。
だから、出た光のほうを見ます。3メートル先の的にスポットを当てて、ずれていればネジを回す。当たるまで繰り返す。基準は装置ではなく、飛んだ先です。
3メートル先でスポットが±1センチに収まるところまで追い込みました。
これは角度でいうと0.19度です。同じ3メートルで、カップの半径5.4センチは1.03度に当たります。狙いのずれとしては、カップの5分の1ほど。自分の用途には足りています。
同じ計算を、パターを比べるときにも使いました。入った率でパターを比べたら、届いたかどうかを比べていましたでは、打ち出し方向のばらつきが2ヤードではカップの半径に収まり、8ヤードではみ出すところまで広がります。
この道具を使う番が来ました。8ヤードでパター3本のばらつきを比べたら、打ち出し方向だけでは構えのせいなのかストロークのせいなのかが分けられませんでした。次はここで向きを測ります。
やっていないこと
考えただけで、作っていないものが2つあります。
ひとつは、フェースに当たったことを検知する回路です。銅箔テープを接点にする案まで書いて、そこで止まっています。
もうひとつは、屋外で使えるようにすることです。レーザーの波長を変える、接点を錆びない材質にする、的の側に反射シートを置く。どれも紙の上の話です。直射日光の下で何メートル見えるかも、計算しただけで測っていません。
どちらも、この記事の時点では存在しない機能です。
同じものは作れますが、売ることはできません
レーザーポインターの類は、消費生活用製品安全法の特別特定製品です。事業として製造・輸入・販売するには、技術基準に適合させてPSCマークを表示する必要があります。
規制されるのは製造と販売です。個人が自分用に作って自分で使う分は対象外です。
つまりこの装置は、作れますが売れません。譲ることも、3Dデータを配ることもしません。
3,410円という数字には、試験も認証も入っていません。売るつもりなら、そこから先が必要になります。作るのと売るのでは、必要なものが違います。また精度のチェックもしてません。
法令の解釈は、自分で調べた範囲です。
なお、使っているモジュールは515nm 5mWで、クラス3R相当です。直視すると目を傷めます。人に向けない、反射する面に向けない。ここは自作かどうかに関係なく守る必要があります。
使い方は、別の記事に書いています
この装置は、パターの練習では狙いを合わせるために使っています。アプローチ用のカップの向きを決めるのにも使っています。
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