13年前、私はスライサーでした。ブログに「脇を締めろ」と書いていたくらいです。
いまはドローヒッターで、ミスは左です。だから「直しすぎて通り過ぎた」という記事を書くつもりでした。
手元には弾道測定器のデータがあります。確かめてから書こうと思って、開きました。
答えは出ませんでした。この記事は、その顛末です。
書こうとしていた記事
前の記事で、13年前に自分が書いたスライスの説明を検証しました。結論は「観察は正しかったが、説明が一段抜けていた」でした。

その続きとして、こう書くつもりでした。
スライスとフックは同じ軸の両端である。私は13年かけてスライスを直し、行きすぎて反対側に出た。だからいまは左に困っている——。
筋は通っています。あとは数字で裏を取るだけでした。
コースで起きていること
まず、コースでの事実から書きます。
私の球筋は強めのドローです。右に打ち出して、センター付近から左に転がっていきます。スタンスも右を向いていることが多い。曲がりを見越して、無意識にそうなっています。
Garmin Approach S70 にティーショットの記録が残っています。

| 割合 | |
|---|---|
| 左に外す | 40% |
| フェアウェイ | 39% |
| 右に外す | 20% |
左に外す回数は、右のちょうど2倍。 ばらつきの中心は、センターラインの5ヤード左でした。

アプリの分析にはこう書かれていました。
さらに照準を右に合わせて、フェアウェイに入る回数が多くなるかどうかを確認してください。
すでに右を向いているのに、まだ足りないと言われています。ドローの曲がり幅に対して、狙いが追いついていない。
ここまでは、感覚とデータが一致しています。
ところが、練習場の数字は逆でした
2025年3月29日、練習場でドライバーを54球打っています。Garmin Approach R10 の平均値がこれです。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| クラブパス | 0.6L(0.6度 左) |
| フェース角 | 3.9R(3.9度 右) |
フェースと軌道の差は、右に4.5度。
前の記事で整理したとおり、曲がる方向を決めるのはこの差です。右に開いていれば右回転、つまりスライス回転です。
ドローどころではありません。13年前と同じ側を指しています。

同じ人間が、同じドライバーで打っています。どちらかが間違っているはずです。
理由を考えたら、5つ出てきました。全部、私の側の問題でした。
理由1:ボールが違う
最初に疑ったのがこれです。
練習場のボールとコースのボールは、別物です。練習場のボールは硬くて、耐久性を上げるために作られています。同じように打っても、同じようには飛びません。
私には経験則があります。
練習場では「やや捕まらない」くらいの球が出ているときのほうが、コースでは調子がいい。 逆に、練習場でセンターから左に行くようだと、コースではダックフックになることが多い。
つまり練習場の球は、コースの球より曲がりにくい。同じスイングでも、捕まっていないように見える。
これは長年の実感で、ずっと「そういうものだ」と思っていました。今回調べてみて、この実感には根拠があることが分かりました。次がその話です。
理由2:クラブの数字は、ボールの飛び方から逆算されている
ここが今回いちばんの発見でした。
Garmin Approach R10 は、ドップラーレーダーの機械です。クラブヘッドを直接見ているわけではありません。 クラブパスもフェース角も、ボールがどう飛んだかから推定した値です。
その前に4年使っていた FlightScope Mevo も、同じく後方に置くタイプでした。2台とも同時には使えません。
つまり、ボールが違えば、クラブの数字まで変わります。
「クラブパス0.6L、フェース角3.9R」という数字は、クラブを測った結果ではなく、練習場のボールがそう飛んだという結果でした。私はそれを、自分のスイングの性質だと思って読んでいました。
理由1と理由2は、別々の問題ではありません。ボールが違えば数字が違うのは、この機械の仕組み上、当たり前のことでした。
理由3:そもそも、誤差がこの差より大きい
さらに調べて、もっと単純な問題に行き当たりました。
Golf Insider UK が2023年10月に Trackman 4 と比較した測定では、R10 の誤差はドライバーでフェース角が2.76度、クラブパスが2.98度でした。
私が見ていた「フェースと軌道の差、右に4.5度」という数字は、この誤差と同じくらいの大きさです。
測定器が測れる精度を、私の読み取りが超えていました。
念のため書いておくと、R10 が悪い機械だという意味ではありません。5万円台でこれだけ測れるのは驚くべきことです。ただし、1度や2度の差を語れる道具ではないというだけです。私はそれを知らずに、0.6度と3.9度を有効数字として扱っていました。
その後、練習場で弾道測定器を3台同時に走らせて、同じ球を突き合わせました。ボールの左右のズレで、R10だけが他の2台と揃いませんでした。ここで測ったのはクラブパスやフェース角ではなくボールの着地点なので、この理由3を確かめたことにはなりません。それでも向きは同じでした。同じ30球を、2台は「22球が左」と言い、1台は「10球」と言いました
理由4:あの日、私はスイングを測っていなかった
もうひとつ、恥ずかしい理由があります。
R10 の前でドライバーを打つとき、私はたいていクラブをいじっています。ヘッドの錘を替えて、弾道がどう動くかを見ているのです。
あの54球は、スイングを測ったデータではありません。錘の設定を測ったデータです。そもそもスイングを固定する気がなかった。
平均値として読んだのが間違いでした。
理由5:「何に対して」の角度なのか
クラブパスもフェース角も、基準となる線があって初めて意味を持つ数字です。練習場では、測定器を置いた方向が基準になります。
一方でコースの私は、スタンスを右に向けて構えています。基準そのものがずれている。
同じ「クラブパス0.6L」でも、目標線に対してなのか、自分のスタンスに対してなのかで意味が変わります。私はそこを区別していませんでした。
結論:この2つは、比べられません
正直に書きます。今回、答えは出ませんでした。
コースの結果は信用できます。実際にプレーした結果です。左に2倍外していて、球筋はドローです。
練習場の数字は、この目的には使えません。ボールが違い、その違いがクラブの数字にそのまま乗り、誤差は見たい差と同じ大きさで、しかも錘を替えながら打っていました。
数字が間違っているのではなく、測ったものが違うということです。
だから「スライスを直しすぎて通り過ぎた」という記事は、まだ書けません。可能性は残っていますが、証明はできていません。
弾道測定器を買う人へ、先に言っておきたいこと
3つあります。
練習場のボールで測った数字は、コースの球ではありません。 レーダー式の測定器は、ボールの飛び方からクラブの数字を逆算します。ボールが変われば、クラブの数字も変わります。
誤差より小さい差を語らないでください。 手持ちの機械が何度まで測れるのかを先に調べる。1〜3度の話をするなら、その道具では足りていないかもしれません。
何を測ったかを記録してください。 器具を試した球も、素振り代わりの球も、真剣に打った球も、アプリは全部まとめて平均します。私はそれを2年分貯めて、いざ使おうとした今日、使えないことに気づきました。
前の記事で、Oura リングの世代を替えたら数値が地続きでなくなった、という話を書きました。あれは測定器側の事情でしたが、今回は完全に自分の使い方の問題です。

測り直します
条件を決めました。
- 錘を固定する。 そのあいだセッティングは触らない
- 器具のテストと、スイングの計測を、同じ日にやらない
- 目標線に対してスクエアに立って測る。 コースの「右を向いた構え」とは分けて考える
- 20球以上の平均で見る
- コースボールでも測る。 練習場のボールとの差そのものを記録する
5つ目は、今回いちばん気になったところです。同じスイングで、レンジボールとコースボールがどれだけ違う数字を出すのか。 これが分かれば、これまでのデータも、多少は補正して読めるようになるかもしれません。
この5つ目は、まだ果たしていません。そのため、ツアー選手の飛距離と自分の数字を並べたときは、練習場の測定器の数字を使わず、コースで測ったGPSの記録だけを使いました(LPGAツアーに、私と2ヤードしか違わない選手がいました)。
そのうえで、「スライスを直しすぎて通り過ぎたのか」に答えを出します。
使っているのは Garmin Approach R10 です。数字そのものは正確に出ます。悪いのは、私の使い方でした。
もう1台の測定器でも、まったく同じことが起きていました。

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条件を揃えた測り直しはまだですが、別の測定器で自宅のアプローチを80球取ったところ、79球が左回転でした。その記録は別に書いています。ここで出たスライスの数字とは逆の形です。どちらが正しいかではなく、測り方が違うという話になります。
まとめ
コースでの私は、強めのドローで、左に2倍外しています。ここは事実です。
練習場で測った数字は、スライス側を指していました。ただしその54球は、練習場のボールを、錘を替えながら、誤差より小さい差を読み取ろうとして打ったものでした。
弾道測定器を2台持っていて、何年分ものデータがあっても、条件を記録していなければ答えは出ませんでした。
このサイトは「感覚を実測で確かめる」場所のつもりでいました。今回分かったのは、実測のほうにも、同じくらい疑いの目が要るということです。
次は、条件を揃えて測ります。

参考:R10の測定精度については Golf Insider UK による Trackman 4 との比較テスト(2023年10月)を参照しました。


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